愛知県岡崎市の小さな個別学習塾が、不登校の生徒向けの特別教室を6月に「開校」した。運営する塾長は、これまでも「死にたい」と思う子や学校に居場所が無いと感じる子たちと向き合ってきた。きっかけは、会社員時代の親友に対する自責の念だ。
平日の午後8時ごろ、川沿いの雑居ビル2階の一室。塾長の仲川浩司さん(50)は、中学生の生徒3人と向き合っていた。「英語の現在完了形にはみんな苦しむことになる」。科目に合わせ、一人一人に助言する。
学習塾を開くまでは、市内の食料品の製造販売会社に勤めていた仲川さん。25年前、東海地区で営業を担当していた。当時、同期入社で一番気の知れた友人男性がいた。男性は仲川さんを「リーダー」、仲川さんは男性を「シーモネーター」と名付けた。冗談を言うと、必ず反応する間柄で、2人は同期のなかでも漫才コンビのようだったという。同じ出張先で夜中にドライブをしたり、廃屋で花火をしたりした。
仲川さんが「この会社の社長になりたい」と打ち明けると、「俺と同じこと考えとったんやな」と言われ、ライバル感情も芽生えた。ただ、あるとき、企画の打ち上げで相談を受けた。「なあ俺、みんなの中で浮いてへんか?」。「そんなことねえよ」と仲川さんは返した。男性の心情の変化に、当時は気づかなかった。男性は大阪に配属になったが、年に1回の同期会で彼に会うのが楽しみだった。
数年後、同じ本社勤務になった。女性社員が、仲川さんの職場に駆け込んできた。「誰かあの子を止めて!」。男性が社内で取り乱していた。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル